テスラ4680セルの「タブレス」とは?仕組みとメリットを初心者向けにやさしく解説

確認日 2026年10月9日 / 読む時間 約6分

タブあり 出口は1か所 タブ 遠い場所の電気ほど、長い道のりを進む 抵抗が大きく、熱が出やすい タブレス 端ぜんぶが出口 どの場所の電気も、近くの端へ出られる 道が短く、熱が出にくい
巻く前のシートを広げたと考えた、電気の進み方のイメージ図です(実物の構造図ではありません)。点は電気、動く速さは進む距離に合わせてあります。
目次
  1. タブレスとは?
  2. 従来の電池は何が困るのか
  3. なぜ熱が減るのか
  4. 4680セルとは
  5. 熱が出ないわけではない
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 出典

タブレスとは、電池の中で電気の「出口」になっていた小さな金属の板(タブ)をなくし、金属の膜の端全体を出口にする作り方です。電気が進む道が短くなるので、電気の通りにくさ(抵抗)が減り、熱が出にくくなります。

テスラの新しい電池「4680セル」は、この考え方を採り入れた電池として知られています。この記事では、専門用語をなるべく使わずに、タブレスが何をどう変えるのかを説明します。特許と論文で確認できたことだけを書き、確認できていないことは、そう断って書きます。

タブレスとは?

「タブ」とは、電池の中の金属の膜(集電体)から電気を取り出すための、小さな金属の板です。電池を作るとき、金属の薄いシートに材料を塗り、くるくると巻いたものを缶に入れます。従来は、そのシートからタブを出して、そこから電気を取り出していました。

「タブレス(tabless)」は、そのタブを使わず、シートの端の部分を缶などにまとめて接触させる作り方です。出口が1か所の板から、端全体に変わるイメージです。

テスラは、この「タブレス電極のセル」について特許を出願しています。特許の題名は「Cell with a tabless electrode」(タブレス電極をもつセル)で、2020年5月7日に公開(US20200144676A1)、2023年9月5日に登録(US11749842B2)されています。

従来の電池(タブあり)は何が困るのか

満員のコンサート会場で、出口が端に1つしかない状況を想像してください。遠くの席の人は、長い距離を歩きます。通路は混んで、なかなか進めません。

電池の中の電気も同じです。タブが1か所にあると、シートの遠い部分の電気は、シートの上を長い距離進んでタブに届きます。道が長いほど、電気は通りにくくなります。そして、通りにくい道を電気が進むと、熱が出ます。

電池が熱くなると、安全の面でも、寿命の面でも、よくありません。急速充電のように大きな電流を流すときほど、この問題は大きくなります。

タブレスだと、なぜ熱が減るのか

理由は、物理の基本の2つの法則で説明できます。

法則 ①
抵抗 ∝ 道の長さ

同じ材料なら、道が2倍の長さになると、抵抗も2倍になります。テスラの特許にも、「材料の電気抵抗は、その長さに比例する」という趣旨の説明があります。

法則 ②
熱 ∝ 電流の2乗

流す電流が2倍になると、出る熱は4倍になります。抵抗が大きいほど、熱も大きくなります。

この2つから、「道を短くして抵抗を小さくすれば、熱を減らせる」と言えます。タブレスは、出口を端全体に広げることで、電気が進む道を短くしています。

特許では、タブレスにすることで、抵抗とコストを下げられること、さらに、金属の缶と広い面積で接触するので熱を伝えやすく、冷却しやすいことが説明されています。

4680セルとは

「4680」は、電池の大きさを表す数字で、直径46mm、長さ80mmの円筒形であることを示します。

第1世代の4680セルを分解・測定した論文(2023年12月29日公開、Journal of The Electrochemical Society)によると、次のようなセルでした。

項目論文の報告
正極の材料NMC811(ニッケル・マンガン・コバルトの化合物)
負極の材料黒鉛(シリコンなし)
体積あたりのエネルギー622.4 Wh/L
重さあたりのエネルギー232.5 Wh/kg

別の研究グループが2025年に発表した論文(Cell Reports Physical Science)でも、4680セルが分解・測定されています。その表では、重さが355g、容量が23.125Ahなどと報告されています。測定したセルや方法が違うため、論文によって数字は少し異なります。 「4680の公式な性能値」ではなく、「その論文が測ったセルの値」として読んでください。

「タブレスなら熱が出ない」わけではない

ここは、よく誤解されるところです。

約70℃

4680セルを冷却しないで2C(理論上、約30分で満充電になる速さ)で充電したときの、セルの表面温度。前述の2023年の論文の報告です。

つまり、タブレスは熱を減らす工夫ですが、熱をゼロにするものではありません。大きな電流を流せば、やはり熱は出ます。そのため、実際の電池パックでは、冷却の仕組みも欠かせません。

よくある質問

タブレスにすると、何が一番よくなりますか?

特許の説明では、抵抗とコストが下がること、熱を伝えやすくなることです。実際に、どれくらい改善するかは、測定した論文で確認する必要があります。この記事では、その大きさまでは確認できていません。

タブレスはテスラだけの技術ですか?

この記事では確認していません。タブをなくす、または減らす考え方は、他社の電池でも研究されています。ここでは、テスラの特許とセルについてのみ書いています。

4680のタブレスは、特許どおりの構造ですか?

特許は「こういう構造を考えた」という文書で、実際のセルがその構造かどうかは、分解した論文などで確かめる必要があります。この記事では、特許の内容と、分解論文の数値を、別々の事実として紹介しています。

まとめ

次の記事では、電池の中で電気がどうやって「ためられる」のか(リチウムイオン電池のしくみ)を説明する予定です。

出典(確認日 2026-10-09)

この記事は、科学技術の学習を目的としたもので、投資の助言ではありません。